BUYER DD / 50 POINTS

一棟収益不動産の買主DD50項目

一棟収益不動産の売買では、レントロールや利回りだけでなく、権利関係、実際の入金、賃貸借契約、敷金・保証金、修繕履歴、設備、建築・消防資料、買主融資、決済条件まで確認されます。売主側でも、買主DDが始まる前に資料の有無と確認中の項目を整理することが重要です。

専門家・法人 03-6279-4987

一棟収益不動産の買主DDとは

一棟マンション・一棟アパート・一棟ビルなどの収益不動産では、買主は価格や表面利回りだけでなく、権利、土地、収益、賃貸借、管理、修繕、設備、建築、消防、資金、契約、決済を横断して確認します。買主デューデリジェンス(買主DD)は、その確認作業の総称です。

売主側にとっても、買主DDは「相手の都合」ではありません。資料不足や確認中項目を先に一覧化しておくと、価格説明・融資対応・契約条件・決済準備のどこが弱いかを早めに把握できます。本記事は、実務で確認されやすい50項目を6分類で整理する包括チェックリストです。

任意売却の手順全体やサービサー配分の詳細、正常化NOIの計算手順、資料の取得方法全般は、それぞれの専門記事へ送ります。この記事は買主DDの横断確認に集中します。

買主DD開始前に売主が整理すること

最初から完璧な仮想データルームを作る必要はありません。まずは「ある/ない/古い/確認中/再取得可能/専門家確認が必要」を分けます。買主や金融機関から質問が来る前に、レントロールと実入金、賃貸借契約、敷金・保証金、修繕・設備、建築・消防、権利関係の所在を棚卸しすると、DD開始後の追加質問を減らせます。

整理の目的は、欠けている項目が価格・融資・契約・決済のどこへ影響するかを見える化することです。全資料が揃うまで相談できないわけではありません。

買主DD50項目の全体構成

50項目は次の6分類です。合計は必ず50です。各分類の表では、確認項目・主な資料・買主が見る理由・未整理時に起きやすいことを並べています。

表は左右にスワイプして確認できます

分類項目数番号ジャンプ
A権利関係・土地8No.1〜8この分類を見る
B収益・レントロール10No.9〜18この分類を見る
C賃貸借・管理9No.19〜27この分類を見る
D建物・設備・CapEx10No.28〜37この分類を見る
E建築・消防・環境7No.38〜44この分類を見る
F買主・契約・決済6No.45〜50この分類を見る
合計50No.1〜50

← 左右にスワイプできます →

権利関係・土地の買主DD

所有者・共有者、抵当権・根抵当権、差押え、共同担保、境界、接道・私道、越境、地役権・借地・使用関係を確認します。法的効果は断定しません。必要に応じて弁護士・司法書士・土地家屋調査士等へ確認してください。

表は左右にスワイプして確認できます

No.確認項目主な確認資料買主が見る理由未整理の場合に起きやすいこと
1所有者・共有者登記事項証明書、法人登記、本人確認、決裁資料売主の売却意思と権限が契約・決済の前提になる共有者同意や法人決裁が遅れ、契約日程がずれる
2抵当権・根抵当権登記事項証明書、残高証明、債権者通知抹消条件と順位が価格・決済可否に直結する抹消条件が不明のまま買付が進み、決済で止まる
3差押え・仮差押え・処分制限登記事項証明書、差押通知、競売関係資料処分制限があると決済・引渡しの前提が変わる税金・社保差押や競売進行の確認遅れで延期
4共同担保登記事項証明書、共同担保目録、債権者照会他物件との一括抹消条件が売買範囲に影響する他物件条件が判明し、価格や契約条件が変わる
5境界確定測量図、境界確認書、境界標写真土地面積と隣地紛争リスクを評価するため測量・隣地確認の追加でDD期間が延びる
6接道・私道公図、道路台帳、持分・通行掘削承諾書再建築・融資・将来売却の前提になる私道承諾やセットバック確認で融資条件が変わる
7越境・被越境測量図、越境覚書、現地写真、配管図建物・塀・配管の権利関係を確認するため覚書作成や是正見積が追加され条件交渉が長引く
8地役権・借地・使用関係登記、借地契約、使用貸借・通路・配管資料第三者利用や通路依存が収益・利用に影響する権利関係の整理不足で契約条件が固まらない

← 左右にスワイプできます →

収益・レントロールの買主DD

最新レントロール、実入金、滞納、空室、退去・申込、フリーレント・減額、関連利用、付帯収入、正常化NOI、運営費を確認します。記載と実入金の一致、継続性、一時的収入の切り分けが中心です。正常化NOIの詳細計算は専門記事へ送ります。

表は左右にスワイプして確認できます

No.確認項目主な確認資料買主が見る理由未整理の場合に起きやすいこと
9最新レントロール最新レントロール、募集条件、管理会社出力部屋ごとの賃料・空室・契約条件の出発点になる古い一覧だと価格根拠が信頼されにくい
10実際の入金明細通帳・送金明細、管理会社入金レポート記載賃料と実入金の差を確認するため乖離が残ると価格・融資評価が下がる
11滞納滞納一覧、督促履歴、保証会社請求資料回収不能リスクと承継後の回収負担を見る滞納額不明のままではDDが完了しない
12空室空室一覧、募集広告、内見状況、原状回復見積稼働率と埋戻しコストを評価するため空室費用が後から判明し条件変更になる
13退去予定・入居申込み解約通知、申込書、審査状況直近の収支変動を織り込むため収入前提が変わり、再査定が必要になる
14フリーレント・賃料減額賃貸借契約、覚書、レントロール注記一時的に低く見える賃料を見分けるため見かけ利回りで進め、後で価格交渉になる
15親族・関連会社・オーナー使用契約書、使用区画一覧、実入金との突合市場賃料でない区画を除外・正常化するため関連利用が残ると収益評価がやり直しになる
16駐車場・付帯収入駐車場契約、看板・自動販売機等の契約本業賃料以外の継続性を確認するため付帯収入が過大計上され評価がずれる
17正常化NOIレントロール、実入金、運営費、固定資産税等取得後に維持できる収益を見るため価格根拠が弱く、買主・融資の納得が得にくい
18運営費・固定資産税・保険料管理費明細、固定資産税通知、保険証券NOI算定と取得後キャッシュフローに必須費用不足で利回りが過大に見える

← 左右にスワイプできます →

レントロールと正常化NOIを詳しく確認する

賃貸借契約・管理体制の買主DD

賃貸借契約、普通借家・定期借家、店舗・事務所、敷金・保証金、サブリース、管理委託、家賃保証、紛争中案件、オーナー使用区画を確認します。個別契約の法的評価は弁護士等へ確認が必要です。

表は左右にスワイプして確認できます

No.確認項目主な確認資料買主が見る理由未整理の場合に起きやすいこと
19賃貸借契約書全戸・全テナントの契約書、更新・覚書権利義務と特約の正本を確認するため契約不足でDD質問が増え、引渡し不安が残る
20普通借家・定期借家契約書、定期借家の説明書面・公正証書等更新・終了時期が収益計画に影響する終了・更新条件の誤認で価格前提が崩れる
21店舗・事務所テナント契約書、用途・改装特約、保証金、売上連動条項住宅と異なるリスク・原状回復を見るため用途・改装条件が後から判明し交渉が長引く
22敷金・保証金・預り金預り金一覧、契約残高、管理会社保管証明承継額と返還債務を決済で確定するため残高不明で決済精算・契約条件が止まる
23サブリース・一括借上げサブリース契約、原契約、改定・解約条件賃料保証の継続条件を確認するため原契約不足で収益の継続性が説明できない
24管理委託・集金代行管理委託契約、送金サイクル、手数料率取得後の管理体制と費用を引き継ぐため管理切替方法が決まらず決済後オペが混乱する
25家賃保証会社保証契約、保証範囲、滞納時フロー回収手段の有無を評価するため保証切れ・未加入が後から判明する
26滞納・明渡し・紛争中案件督促記録、内容証明、訴訟・調停資料承継後の紛争コストを見積もるため紛争情報が後出しされ条件変更になる
27オーナー使用区画・管理人室・倉庫使用区画一覧、鍵・残置物・明渡し条件収益化可否と引渡条件を確定するため明渡し未確定で決済・引渡しがずれ込む

← 左右にスワイプできます →

建物・設備・CapExの買主DD

修繕履歴、外壁・防水、給排水、エレベーター、受水槽、消防設備、機械式駐車場、電気設備、広告・アンテナ、将来CapExを確認します。実施時期・保証・更新見積・取得後支出が見られます。設備・CapExの詳細は実務ハブへ送ります。

表は左右にスワイプして確認できます

No.確認項目主な確認資料買主が見る理由未整理の場合に起きやすいこと
28修繕履歴工事履歴、請求書、保証書、写真過去の是正と残リスクを把握するため履歴欠落で買主が過大なCapExを見込む
29外壁・屋上防水・鉄部改修履歴、点検報告、見積書大規模修繕の時期と金額を見るため大規模改修前提で価格交渉が起きる
30給排水管・漏水履歴漏水記録、配管更新履歴、是正見積入居影響と更新費が大きいため現地で漏水痕跡が出て条件変更になる
31エレベーター保守契約、点検記録、更新見積更新費・稼働停止リスクが大きい部品供給・更新費不明で融資条件が変わる
32受水槽・給水ポンプ点検記録、清掃記録、更新見積給水停止は入居・衛生に直結する更新費追加でDDが長引く
33消防設備点検報告、是正記録、消防関係図是正未了は利用・融資に影響しうる是正費用が後から出てくる
34機械式駐車場・タワーパーキング保守契約、故障履歴、部品・更新見積維持費と稼働停止リスクが高い更新前提で収益・価格が変わる
35キュービクル・電気設備点検記録、容量資料、更新見積電力供給と更新費を確認するため容量不足・更新費が後出しされる
36屋外広告物・屋上看板・アンテナ設置許可、契約、賃貸・権利関係収入・撤去義務・違法リスクを見る撤去費用や契約終了条件が後から出る
37将来CapEx・修繕見積書中長期修繕計画、業者見積、優先順位表取得後数年の支出を織り込むため見積不足で買主条件が変わる

← 左右にスワイプできます →

一棟物件のCapEx・設備・クロージング実務を見る

建築・消防・環境の買主DD

確認済証、検査済証、建築計画概要書・台帳、増改築・用途変更、既存不適格・法令確認、消防点検・是正、アスベスト・土壌・環境を確認します。違法・安全・問題なし等は断定しません。必要に応じて建築士・行政・消防・環境調査会社等へ確認します。

表は左右にスワイプして確認できます

No.確認項目主な確認資料買主が見る理由未整理の場合に起きやすいこと
38確認済証確認済証、確認申請図、保管状況メモ建築手続の出発点を確認するため所在不明だと追加照会で時間がかかる
39検査済証検査済証、完了検査記録、代替資料完了検査の有無は融資・評価で問われやすい有無確認ができず融資前提が変わる
40建築計画概要書・台帳記載事項概要書、台帳記載事項証明、公図・測量との突合図面・現況との一致を確認するため不一致箇所の追加説明が必要になる
41増改築・用途変更増改築図、許可・届出、契約特約現況と許可内容の差を見るため未整理増築の指摘で条件交渉が長引く
42既存不適格・法令確認建築士意見、条例・接道確認メモ増改築・建替の制約を把握するため断定せず専門家確認が必要になる
43消防設備点検・是正事項点検報告書、是正完了資料、消防照会メモ利用継続と是正費用を確認するため是正未了が後から判明する
44アスベスト・土壌・環境確認調査報告書、解体見積、過去利用履歴改修・解体時の費用とリスクを見る専門調査追加でDD期間が延びる

← 左右にスワイプできます →

買主・売買契約・決済のDD

買付証明書、資金証明・買主属性、買主融資、追加質問・現地確認、売買契約条件、決済・抹消・管理移行を確認します。買付があっても、資金・融資・DD・契約・決済が揃わなければ成立しません。

表は左右にスワイプして確認できます

No.確認項目主な確認資料買主が見る理由未整理の場合に起きやすいこと
45買付証明書買付証明書、有効期限、条件記載価格・条件・期限の出発点になる条件不明瞭な買付では説明が進みにくい
46資金証明・買主属性残高証明、法人情報、SPC・受益者説明決済可能性を確認するため資金裏付け不足で債権者・売主の確認が止まる
47買主融資事前相談結果、申込状況、担保・収益評価メモ融資特約と決済日の前提になる審査長期化で契約・決済がずれる
48DD質問・追加資料・現地確認質問一覧、追加提出資料、現地調査記録未解決項目を契約前に閉じるため質問滞留でDD完了日が決まらない
49売買契約条件契約案、特約、契約不適合・現況有姿条項DD結果を契約文言へ反映するため条件不一致で契約締結が遅れる
50決済・抵当権抹消・管理移行決済日程、抹消書類、管理移行表、入居者通知案同日に権利移転と運用引継ぎを完了するため管理・敷金・抹消のどれかが未整理で延期

← 左右にスワイプできます →

一棟物件で買主がいても決済できない理由を見る

任意売却が関係する一棟物件で追加確認すること

任意売却が関係する場合は、上記50項目に加えて、金融機関・保証会社・サービサー、抵当権順位、根抵当権、共同担保、税金・社会保険料差押え、競売開始決定、配分、抹消条件、買付証明、資金証明、買主融資、決済期限を確認します。ここでは概要に留め、詳細は任意売却ハブと決済リスク記事へ送ります。

資料がない・確認中の項目があっても、DD準備は始められる

資料は、ある/ない/古い/確認中/再取得可能/専門家確認が必要/管理会社へ照会/行政へ照会/現地調査が必要、に分類します。最初から完全なVDRを要求するのではなく、欠けている項目が価格・融資・契約・決済のどこへ影響するかを整理します。全資料が揃うまで売却相談できないわけではありません。

一棟物件の売却で必要な資料を確認する

売主側のDD準備チェックリスト

買主DDが始まる前に、次を確認します。未完了の項目は「確認中」として残し、影響範囲(価格/融資/契約/決済)をメモしておくと実務が止まりにくくなります。

買主DDで進行が止まりやすいケース

掲載内容は、過去の相談・取扱経験を個別案件が特定されない形で一般化したものです。同様の結果を保証するものではありません。

レントロールと実入金が一致しない

収益評価・価格交渉が止まる

賃貸借契約書が不足している

DD質問が増加し契約前に長期化する

敷金・保証金残高が不明

決済精算と承継条件が確定しない

境界・越境資料がない

土地リスクの説明が進まない

サブリース原契約がない

保証賃料の継続性が説明できない

修繕履歴が残っていない

CapEx見積が過大になりやすい

大型設備の更新費が不明

融資・価格条件が変わりやすい

検査済証の有無が確認できない

融資前提の確認が長引く

消防是正状況が分からない

是正費用が後出しされる

買主の融資前提が変わる

決済日が確定しない

現地調査で新たな不具合が見つかる

条件変更・再DDが起きる

売買契約条件とDD結果が一致しない

契約締結が遅れる

敷金承継・管理移行が未整理

決済当日の引継ぎが止まる

任意売却で競売期限とDD日程が合わない

準備不足のまま期限を迎える

この記事の実務監修者

堤 誠之(ジャパンリアルター株式会社 代表取締役)は、一棟マンション・一棟アパート、一棟ビルなどの収益不動産売買、任意売却、買主DD資料、レントロール、修繕・設備資料、サービサー・債権者条件、決済資料の整理に関わってきました。一棟収益不動産の売却では、価格査定だけでなく、権利、収益、賃貸借、建物、設備、法令、買主融資、契約、決済を横断して確認することが重要です。

当社は不動産売却実務および仲介を行う会社であり、法務・税務・登記・建築・消防・環境・不動産鑑定等の判断を代行するものではありません。個別具体的な判断は、弁護士、税理士、司法書士、土地家屋調査士、建築士、不動産鑑定士等へ確認する必要があります。個別案件の成果を保証するものではありません。

実務監修者プロフィールを見る

一棟収益不動産の買主DD・売却実務の相談

50項目のどれが「ある/ない/確認中」かによって、価格説明・融資・契約・決済の進め方が変わります。成立や価格を保証するものではありません。

専門家・法人 03-6279-4987

よくある質問

一棟収益不動産の買主DDでは何を確認しますか?

権利・土地、収益・レントロール、賃貸借・管理、建物・設備・CapEx、建築・消防・環境、買主・契約・決済の50項目を横断確認します。個別事情により重点は異なります。

売主は買主DD前に何を準備すべきですか?

資料の有無を一覧化し、レントロールと実入金、契約、敷金、修繕・設備、建築・消防、権利関係の所在を整理します。全資料が揃うまで待つ必要はありません。

資料が不足していても売却相談できますか?

相談できます。「ない/確認中」を明示し、価格・融資・契約・決済への影響を整理します。成立を保証するものではありません。

レントロールと実際の入金が違う場合はどうなりますか?

乖離理由を確認し、正常化して価格根拠を作り直すことがあります。詳細は正常化NOI記事を参照してください。

検査済証がない場合でも買主DDは進められますか?

進め方は個別事情によります。代替資料や行政照会の要否を整理します。融資可否を断定するものではありません。

修繕履歴がない場合はどう整理しますか?

分かる範囲の工事・点検・見積を集め、不足は現地確認と見積取得で補います。過大なCapEx見込を避けるための整理です。

買主DDにはどのくらい時間がかかりますか?

物件規模、資料の揃い、買主・金融機関の方針により異なります。期間を保証するものではありません。

任意売却でも同じ買主DDが必要ですか?

収益不動産としての確認は同様です。加えて債権者条件・配分・抹消・競売期限の確認が必要になることがあります。

買主DD後に価格や契約条件が変わることはありますか?

資料不足や現地調査の結果で条件調整が起きることがあります。変更や成立を断定するものではありません。

どのページを見ればよいか迷った方へ

売却相談、買主登録、専門家相談、地域別コラムを目的別に整理しています。該当するページが分からない場合は、サイトマップから確認できます。